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インド滞在記 / アーユルヴェーダの食事でどこまで変わる?前編

インド滞在記 / アーユルヴェーダの食事でどこまで変わる?前編

今年の夏、長いお休みをいただいて14年ぶりとなるインドへ行ってきました。
目的はもちろん「アーユルヴェーダの料理を学ぶこと」
日々お店を営み、実践を重ねているのですが、実際に手を動かせば動かすほどわからなくなってくることもあります。間借りを4年、独立して店舗を作ってから3年の月日が経ち、そろそろ自分を見つめ直すタイミングが来たと思って赴いたインド滞在のレポートを前編、後編にわたってお届けします。

食事が良ければ、薬は要らない。

アーユルヴェーダは「健康な人の健康を護り、病気の人の病を鎮静する」ことを目的とした代替医療です。その健康を守る3つの柱として「食事・睡眠・梵行」を挙げています。つまり、食事だけでなく睡眠や梵行(ぼんぎょうとは夜の性行為のこと。ただ広義では運動のことを指しているのだと思います)ももちろん大事で、食事だけで健康を維持し増進することはできません。

一方で、古典書にこんな有名な言葉があります。

ー食事が悪ければ薬は要らない。食事が良ければ薬は要らない。

不調を感じた時、人はすぐ効く薬を求めがちですが、食事が悪かったら薬すらも吸収できない。一方、食事さえ良ければ、薬なんて要らない。という意味の言葉です。

薬というと病院でもらうものだけを想像しがちですが、薬はもともと生薬、つまりスパイスやハーブでできていますので、みんなが「これさえあれば」と思いながら摂ってる自然由来のスパイスやハーブでさえも、食事が悪いと未消化物が溜まり、せっかくの生薬の良いところも吸収できない身体になってしまう。

それだけ、アーユルヴェーダにおいて食事は大事な存在です。
薬が要らなくなるほど、良い食事で心身を良い状態にしたい、そういう料理が作りたいと思ってアーユルヴェーダ料理を手掛けているわけですが、果たして自分自身が日々、それだけの心身の良い状態を感じているかというと謎です。

インドに行ったらそれを感じられるかも?本当のアーユルヴェーダ料理を学びたい。
そう思って、いろんな人に相談しながら選んだ滞在先は、中部インドのLaturという街にある、Dr.Anupamaの小さな治療院でした。

若き女性の医師が営む治療院は「みんなの家」

こちらがその、Anupama(アヌパマ)先生!

なんとまだ39歳の若き女性アーユルヴェーダ医師です。お父様も弟さんもアーユルヴェーダのドクターで、おじいさんは有機農家さんという、医療と食の家系に生まれ育った先生は、Puneで師匠のもと勉強・修行をした後に故郷Laturの街に戻り、ご自身の治療院を開きました。

ご家族の転勤で日本に8年間住んでいたこともある先生は日本が大好き。日本語も学ばれて、ご自身の治療院のことをみんなが自分の家のように集ってほしいという思いから「みんなの家」と呼んでいます。

本当におうちのような作りで、診察室・製薬室・トリートメントルーム・キッチン・4床のベッドルームがあり、パンチャカルマのために入院滞在も可能な治療院です。先生もここに住んでいます。

今回私はパンチャカルマはしないと決めていたのと、生理中だったため簡単なトリートメントもできないかも?ということで「料理を学びたいので、ぜひお願いしたい」と依頼を出して純粋なホームステイをさせていただきました。

この治療院でのお料理は、アヌパマ先生のお母様が担当しています。

こちらがアヌパマ先生のお母様、私の心の師匠です。
あまりに尊い存在すぎて、前からの写真は撮るのが憚られたので、後ろ姿ですみません。そしてこちらのキッチンは、ご実家の方のキッチン。つまりお父様の治療院のキッチンです。ここでも料理をするお母さん。

インドでアーユルヴェーダを学びたいと思ったら、もっと大きな病院や、大学なんかのチョイスもあるかなとは思いました。でも、アプライした先と色々と相談していく中で「本当に目の前の人を一人一人診て、その人の心身に合わせて料理をする現場が見たい」と考えていったら、とてもスムーズにここに行きつきました。
Laturはとても小さな田舎町で、決して便利とは言えないし、インド人に行っても「Latur?なんでまた」という顔をされます。

それでも、私が本当に学びたかったこと、知りたかった味、それはここにあったんだと、先生のお母さんのお料理を最初の晩に食べてすぐに全身で感じました。お母さんの料理はそれほどすごく、でも名前がつけられるような特別な技術ではなくて、ただただ、長年アーユルヴェーダの医師とともに個人を見つめてきた人だから作ることのできる料理でした。

アヌパマ先生とお父さん、お母さん、息子さん、近隣に住むおじさんや、タクシードライバーの幼馴染など、家族みんなで営む温かい「みんなの家」で、たっぷり2週間からだ全部を使って「アーユルヴェーダは食事だけでこんなに変わる」を体験させてもらったのです。

とにかくピュア、シンプルな工程、そして何より"できたて"

-ある日の昼ごはん / 赤米、チャパティ、ピーナッツのポディ、キャベツのサブジ、アマランサスの葉の炒め物、ダル

-ある日の朝ごはん / ベジタブルウプマ、アマランサスシードのお菓子、甘いミックスナッツ

-ある日の朝ごはん / ポハ(ライスフレーク)、クンディチプーリ、ほうれん草のスナック、パンプキンシード

-ある日の昼ごはん / バスマティ、チャパティ、きゅうり、サンバル、キャベツのサブジ、ビーツのトーラン

これらの写真は私が実際に作っていただいて食べた食事の一部です。どれもとってもシンプルな調理法のものばかりで、見た目も派手ではなく、実際の調理時間は15分とか20分でできるもの。でも、その食材はしっかり厳選され、目の前でゆったりと優しい表情を浮かべて作っていただき、完成したらすぐに「できたて」を食べさせてもらいました。

アーユルヴェーダの食事法の大切な約束事の一つに「消化に良いこと」とありますが、消化に良いというのはつまり、身体がすんなり受け入れるような味というのも含まれます。だから「これは一体なんだろう?!」と頑張って想像しなければならないような複雑な調味は必要なくて、むしろ素材の味を生かして最低限の味付けで調理の工程を終える必要があります。

そして、身体の構成要素全てを素直に滋養し、全身に栄養を行き渡らせるため、素材そのものに生命力があり、またその素材を作った人が良き心を持ち、良き土地で作られているかどうか、そうしたことのほうがずっと大切とされています。

先生の治療院で使われる食材はもちろん全て有機自然栽培のものだけ。雑穀や米、牛乳など全てにわたり、誰が作っているか把握した上で大切な取引の上に仕入れているものばかりです。お祖父様が育てた畑を今は他の人に任せる形で継いでおり、その畑からやってくる野菜や雑穀などもたくさんありました。

私も自分の店「eatreat.ruci」では食材全てを厳選し、良き生産者から大切に預かって、新鮮なうちに、シンプルな工程で調理し、できたての味をお客さまに楽しんでいただいているつもりで来ていましたが、もう圧倒的に違う何かがある。それを探りながら、満面の笑みを浮かべて美味しい美味しいこんなに美味しいもの食べたことない!と毎度の食事を楽しみました。

特にミルクがすごい。このミルクがあるから、ギーがすごい。

アーユルヴェーダといえば、最も有益な食材の一つに「牛乳」や「ギー」があります。どちらも冷性で重性、油性の性質をもち、甘味があり、身体の構成要素を十分に滋養し人の気持ちをリラックスさせる効果のあるとて大切に重んじられている食材です。

一方で、牛乳は塩や魚、酸味と組み合わせると消化に重たく、未消化物を作り出す可能性があるため、単体で、しかも温めて飲むことが大事な食事法の一つです。

余談ですが、消化重性を利用して、チベットの山奥では、牛乳に塩を入れて「塩チャイ」を作り飲む文化があります。この塩チャイは長く消化管に留まるので、お腹がいっぱいな状態が続く。次にいつ食材が摂れるかわからない厳しい土地ならではの知恵といえます。

雪深く厳しい土地に住む人の消化力は高い傾向にあり、長く消化管に留まってもそのうちちゃんと消化することができるので、チベットの人にとっては牛乳に塩を組み合わせることが一つの「アーユルヴェーダ食事法」といえます。ただし、他の地域、特に日本の私たちにとっては当てはまりません。

にもかかわらず、日本では相変わらず給食に牛乳がついてきますね。私は牛乳のことは嫌いじゃないけど、どの給食にも味の組み合わせとして牛乳が合うとは思えなくて、小さな頃とてもストレスに感じていました。今なら「アーユルヴェーダ的に消化に重たいので、給食を食べるときに牛乳は飲みません」と言えるのに!

本題に戻りましょう。そんなわけで、とても大切な食材である牛乳を、インドの人たちは冷たいまま飲むこともないし、塩と組み合わせて調理することもなく、単体で摂ります。特にアーユルヴェーダを知っている人なら必ずそうで、牛乳の質にもこだわるのです。

これは先生の家のキッチンにある牛乳たち。冷蔵庫がないので、こうして常温で保存し、1日に3回沸かし直して使用しています。(大丈夫なの?と思われそうですが大丈夫です)牛乳を常温で置いていると、自然とカードというヨーグルトのようなものができる。これを掬い取り、水で撹拌して作るのが、消化力をUPするドリンク「バターミルク」そしてさらにこのカードを集めて撹拌するとバターができるので、このバターから「ギー」を作ります。

元になっている牛乳、作っているのはもちろん先生が多大なる信頼を寄せている酪農家さんで、お父様の代からお世話になっているこちらの方です。

なんか、、カッコ良すぎて、私は出会った瞬間「忌野清志郎みたいだな」て思っちゃいました。どこが似てるってわけじゃないんだけど...

この牧場はLaturの郊外にあり、とってものどかな風景の中、アーユルヴェーダのたくさんの薬草と、猫と馬と犬に囲まれて営まれています。

こんなとこ!

この牧場はとってもクラシックな酪農法で牛を育てていて、何がすごいって「基本的に親牛の母乳だけで子牛を育てている」こと。酪農に詳しくない方でも想像がつくと思いますが、世界中の牛は購入した飼料を餌として食べて育っており、搾乳されたミルクは全て出荷用にされてしまうのが現実。

でも、清志郎おじさんは、人間の子どもが母親の母乳で育つように、親牛の母乳で子牛を育てることをとても大切にしていて、便利で安価な飼料は与えず、ドネーションで集まるフルーツを合わせて与えているのです。もちろんこの方法では採算を成り立たせるのはとても大変なのですが、貴重な取り組みを長年真摯に続けてこられている清志郎おじさんの仕事には、国からの表彰もあり、多くの寄付もあり、たくさんの人に守られて安定して継続することができているのだそうです。人間国宝みたいな存在なんだろうな。

そしてこのように真摯に営まれている場の牛乳は、なんといっても美味しい。写真は、搾乳したてのミルクを「飲んでみなさい」と分けてもらった貴重な一杯です。私は飲んだ瞬間、自分の体内のスロータスに一気にこのミルクが染み渡り、構成要素の土台を滋養したのを実感しました。

味は母乳に似ているのかな(赤ちゃんの時飲んだ記憶は残ってないけど)。ほんのり甘く、薄く、温かい。母乳は人間の構成要素において、その7段階のベースとなる「ラサ(体液)」を構成し滋養するとても大切な存在です。母乳を飲まなくなったら、牛乳やギーで補うのですが、しっかりと健康な土台を作るためにも牛乳やギーの質が高ければ高いほど良いのです。

アヌパマ先生のお母様の料理を食べて着実に入れ替わっていく身体に、ラサの補強が加わって「ああこうして、ひとの身体が食事だけで変わるんだな」と思った瞬間でもありました。

 

こうした日々を経て、私の身体は具体的にどう変わったのか?見た目にはどんな反応が現れたのか?それは後編で引き続き、お届けしようと思います。Stay tuned!

後編に続く>>>

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